VOLVO 164

概要
初めてヤフオクで購入した車
写真
年式
1971年
車体形式
1641352U
エンジン形式
B30A
所有期間
2005~所有中
解説

VOLVOのチーフデザイナーであるJan Wilsgaardは、1950年から1960年に掛けて人気を博した「Amazon」(120シリーズ)に替わる小型大衆車の後継車として1960年代に「144」(140シリーズ)を設計しました。この144はこれまでのAmazonとは違って四角の箱型デザインを採用。"Simple is beautiful"という彼の信条を具現化したそのスタイルは、その後のVOLVOを代表する車である240シリーズへと受け継がれてゆきます。

その一方でJan Wilsgaardは新しい上級車種の開発を進めていました。というのも1960年代のVOLVOは小型車クラスのAmazonとスポーツクーペのP1800がラインナップされていたのですが、上級車種は1950年代に発表された「PV800」以来10年以上の間ラインナップが無かったからです。もっとも、上級車種の開発がそれまでにVOLVO社内で行われなかった訳ではありません。実際1950年代後半にV8エンジンを搭載した「P358」(Jan Wilsgaardがデザイン担当)というコンセプトカーが開発されていました。このP358の(ゆくゆくは164の外観上における特徴でもある)フロント部のデザイン(大きく開口したグリル)は、Jan Wilsgaardが1950年代にデザインし僅か67台しか生産されなかったP1900のグリルデザインにルーツがあると言われています。このP1900のグリルデザインは同時期に生産されたP179(Margaret Rose)に引き継がれP358へと変化を遂げたのです。しかし、当時の経営陣の最終判断は「上級車の市場投入は時期早々」として残念ながら量産化までには至りませんでした。

144の開発を終えた後、厳しい経営状況の中での上級車種の開発を託されたJan Wilsgaardは、すでに自らが設計し量産を開始している144を改良設計する、という方法をとりました。新しく搭載するエンジンは新開発された3L直列6気筒OHVエンジンのB30。キャブレター仕様のB30Aとインジェクション(Dジェトロ)仕様のB30E、B30Fの2タイプがあるこのB30は、VOLVOとしては第二次大戦後に始めて開発した6気筒エンジンなのですが、新開発とはいえその中身はすでにAmazon, 144に搭載されている2L直列4気筒エンジンのB20のエンジンブロックを単純に2気筒分追加しただけの改良エンジンで、気筒数こそ増えましたがピストン、バルブ類の部品など多くの部品をB20から流用しています。2気筒分長くなったB30エンジンはそのままでは144のエンジンルームには搭載できません。

そこでJan Wilsgaardは144のエンジンルーム、ボンネット、フロントフェンダーをストレッチすることで難なくエンジンを積み込むことに成功。ホイールベースこそ変更(延長)されていますが、フロント部のボディとドライブトレインを除くほとんどの機構(Aピラー以降のボディー、室内、リアサスペンション、フロントサスペンション機構の殆ど)の設計変更を最小限にとどめ部品を144と共通化することに成功し、開発・製造コストを低く抑えることを可能にしました。一方でトランスミッションはMTでは新設計の4段トランスミッションM400とLaylock製のJタイプオーバードライブを追加装備したM410、ATではBorg-WarnerのBW35を搭載。ステアリングも早期(1971年)から油圧式パワーステアリングを標準装備。

また、エンジンルームの拡張に伴うフロント部の設計変更に際しては、かつてJan Wilsgaard自らデザインを手がけたコンセプト車P358のデザインを採用しました。この大きなグリルデザインにより164は、144とは違った上品かつエレガントなスタイルと高級車の品格を得ることができたのです。 ちなみに164のグリルデザインの元となったP1900, P179, P358はこちらで見れます(Internet Archive) http://replay.waybackmachine.org/20091026234857/http://www.geocities.co… ここを読みますと、実は1950年後半にAmazonのモデルチェンジ案としてAmazonのフロントセクションをP179のグリルデザインに変更するという案も検討したけど最終的に却下された、記述があります。もしこの案が採用されていればAmazonのフロントグリルが・・・と想像するのも面白いです。

1969年の誕生から1975年までの間に15万台を生産。一般的に164は「144にB30を載せてボディをちょっと弄っただけ」という、単なる派生車種としてしか認められていないことが多いのですが、実はJan Wilsgaardのデザインの拘りと卓越した設計技術から生まれた車として高く評価されています。そしてその技術は翌年の1976年に誕生するVOLVOの代表モデル「240/260」へと引き継がれてゆきます。

何気なしにヤフオクを見ていたら、見たことのないVOLVOがお手頃価格で出品されていたので、思わず入札。現物を見た際、オイル漏れやキャブの調整不良によるエンジン不調、足回りの劣化はあったものの、ミッション、ボディ、室内はまったく持って問題がなかったので自分の手で直せるな、と思ったのでそのまま落札。いろいろと修理をして現在に至っています。 修理の詳細についてはブログに綴っていますのでごらんください。